坂口恭平さんの本「継続するコツ」に出会ってしまった

継続するコツ 坂口恭平

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年に1冊か2冊、衝撃を受ける本があります。12月になってそんな1冊に出会いました。

坂口恭平さんの「継続するコツ」です。ただただうれしいです。お宝を掘りあてた喜びがあります。スコップでお宝を掘りあてたことがないのにこんな表現をしてすみません。

坂口さんを知ったきっかけは土井善晴先生です。土井先生がどこかの記事でお話しされていた中で坂口さんが出てきました。それも1回だけではありません。土井先生ファンの私としては、そんなに先生の脳内を占めている人であれば、作品をみないわけにはいかないでしょうということで読みました。

「継続すること」自体はそれほど苦手ではないので、ひょっとするとこの本のターゲットとする読者ではないかもしれません。それでもなにかの縁です。坂口さんの作品に触れてみたい、触れるなら最新作がいいというのでこの本を買いました。

この本を読んで感じたことはいろいろとあるのですが、なかでも強く感じたことはこんなに「勢いのある」文章ははじめてだということです。筆者の思いが文章からあふれ出してくる感じと言えばいいでしょうか。こんな体験ははじめてでした。

ガチガチに設計された文章を読むことが多いので、そう感じたのかもしれません。ちょうどこの本を読んだ時に、仕事で何本も医学論文を読んでいたことも影響していたのかもしれません。そういった文章とはまったくちがった勢いに圧倒されたのです。しっかり立っていないと押し流されてしまう、そんな感覚です。

「他人の目を気にしない」という無責任なアドバイスを聞くことは意外と多いものです。けれど、そのアドバイスを聞くたびに、なんかピンとこないんだよなという消化不良になることが続いていました。それがこの本を読んで、「他人の目を気にしない」というのがこういうことなんだと腹落ちしたのです。

やりたいことをやる。ただそれだけ。自分の行動の軸足を自分の中だけに設定する。やりたくないことはやらない。シンプルきわまりない話です。坂口さんの実話が紹介されており、とてもよく理解できました。一瞬、ぶっ飛んでいるなと思ったのですが、これは私が他人の目を気にしているからなんだと思うわけです。

なにかを「作る」のうち、文章を作ることに関して文筆家のちきりんさんが、書きたいことだけ書く、ハッシュタグ企画を頼りにネタをさがすことはないと言われていたことを思い出しました。書きたくもないことを、他人のため、お金のために書いても、書いていてまったくおもしろくないし、結果としていいものができないという話をされていたことを思い出しました。

自分の中にわき起こる、何かをつくりたいという衝動を大切にさえしていればいいんですね。こうしてブログを書いているのですが、これまではできるかぎりたくさんの人に読んでもらいたいと思って、無理やりパソコンに向かっていたこともありました。時期によっては、そういう思いだけで無理してパソコンに向かっていた時期もあったと思います。でも、そんなことはしなくていいんだと、そっと肩に手を置いて語りかけてくれているようでした。

書きたいと思ったことは、むずかしく考えなくてもどんどん文章が頭の中から出てきますし、逆もまた然りです。そんなことにこれまで気づかなかったことに、他人の目の存在の根深さを感じるのです。

文章を書くことについて書きましたが、それ以外にも走る、料理をするなどなにかを生み出す行為についてすべて当てはまる話です。むしろ、人生の中で当てはまらないことがないのではないかというくらいいろんなことにあてはまります。

この事実を知ったのことで、心のありようが大きく変わった気がします。とにかく肩の力が抜けました。力みがなくなりました。こうして文章を書いていても気持ちがいいのです。読んでいる人がどう思うかはまったく分かりませんが、とにかく気持ちがいいのです。頭からあふれてくるメッセージを入力するキー入力のスピードが遅くてもどかしいくらいです。

私にもいくつか継続しているものがあります。本の中でも言語化されていましたが、この継続は「気持ちがいい」「しあわせ」を感じられるものなんですね。この表現、本当によく腹落ちしました。すごくシンプルで、身体的な心地よさがあります。これなんですね。自由になにかをつくり、そのなにかに没頭している時の心地よさというのは。

年の瀬に素敵な本に巡り会えた幸運に感謝です。

坂口恭平 継続するコツ 熊本 「継続するコツ」(坂口恭平)を実践していきなりぶつかった壁