【感想】「おしどり夫婦」ではない鳥たち(濱尾章二著)

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鳥に対する思い込みを揺さぶってくれる一冊でした。

 

きっかけは出口治明APU学長からのご紹介。

「種の起源」を題材にしたセミナーに参加した折、出口さんから参考図書としてご紹介いただきました。

セミナーの様子はこちら

【セミナー】出口治明APU学長の「古典を読めば、世界がわかる」【第1回:種の起源】に参加

 

本書を読んで考えたこと、感じたこと

強く印象に残り、色々なことを感じ、考えさせられたことは次の3つです。

  • 「おしどり夫婦」というネーミングの罪深さ
  • 生物の本能のすごさ
  • 研究者の情熱

 

「おしどり夫婦」というネーミングの罪深さ

仲睦まじい夫婦のことをおしどり夫婦と呼ぶことがあります。

この言葉のおかげで知らず知らずのうちに、鳥たち夫婦は仲睦まじいものだと考えてしまう節があります。

ところが、実際の鳥たちはそうではないですよというのが、本書のタイトルに込められたメッセージです。

鳥たちの生態についてこのように誤解していたとしても、私たちの生活に実害はないので目くじらをたてるような問題ではありません。

しかし、呼び名に引っ張られて印象が操作されてしまう危険性があるということは知っておくべき重要なテーマです。

「がん-4000年の歴史」でも、様々な種類が存在する病気を細胞の異常増殖というくくりだけでまとめて「がん」と呼ぶことによって、見えなくなってしまったものがとてもたくさんあるんだという指摘がされておりました。

【感想】がん‐4000年の歴史 シッダールタ・ムカジー著(ハヤカワ文庫)

 

生物の本能のすごさ

私は鳥の専門家ではないので、本書で書かれている説の真偽を判断することはできません。

しかし、様々な観察結果を踏まえて説明されている説には一定の説得力があります。

鳥たちに直接、行動の理由を確認することはできませんので、もし、本書に書かれていることが真実だとしたら、鳥はとてもしたたかに生きていることになります。

個の繁栄のためにはなんでもしてやろうとするそのしたたかさは、恵まれた環境の中でのほほんと暮らしている私にはすごみに感じられました。

 

研究者の情熱

世の中のあらゆる発見の陰にはとても熱心な研究者がいます。

本書でもこんなことを研究している人がいるんだ!?という研究者が何人も登場します。

全く畑違いの私にとって、その研究テーマを見つけ出したことがただただ驚きです。

鳥のフンに悩まされながら鳥の生態を観測するなんてことは到底できません。

そういう研究者の方の苦労があって、貴重な発見がなされているかと思うととても頭が下がります。

 

とはいえ、人は誰しもそういった熱中できるものを持っているのかもしれません。

周りの人から私を見た場合に、どうしてそんなことに夢中になってるの??というようなものがあるかもしれません。

当の本人にとっては自然のことなので、周りから見た印象に全く気づいていない可能性があります。

 

こんな方にオススメ

実例をふんだんに取り入れた110ページほどの薄い本です。

分厚い本は持つだけで心が折れる、ハイキングに行くので豆知識程度に鳥について調べてみたい、子どもが鳥に興味を示すようになったので子どもと散歩をするときのヒントを探しているという方などにおすすめです。

 

忘れてはいけません。

「種の起源」を読もうとして挫折してしまった方もこの本であれば、進化の面白さを手軽に読み物として楽しむことができます。

読書後の余韻が残っているところでもう一度「種の起源」に挑戦してみるというのも悪くないのではないでしょうか。

(自戒を込めて)

私が読んだ本

本書以外に私が読んだ本を一覧にしています。ぜひご覧ください。

▶︎ 私の血となり肉となった本たち