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こんにちは。2児のパパで共働きのcampion(Follow @beautifulrice1)です。
弁護士の夢やぶれて、およそ15年の月日が流れました。
「DIE WITH ZERO」を読みながらこの15年の記憶がよみがえってきました。これまでも幾度となく思い出すことがありましたが、それは思い出したくない苦い思い出としてでした。
けれど、15年の時を経てようやく客観的に振り返れるようになってきたので、自分の中でのけじめをつけるのと、15年前の自分と似た境遇の人の参考になればと思い、ブログに記録することにしました。
司法試験受験を決意するまで
聞こえてこない不合格者の声
私が司法試験を受験したのは2005年頃のことです。
当時の合格率は3%程度でした。つまり、97%の人は不合格です。
いま考えるととんでもない確率です。
司法試験に合格し、鳴り物入りで活躍している人の話はいろんなメディアで語られる一方、失敗した人の話はあまり聞こえてきません。
人数なら不合格者のほうが圧倒的に多いのに、聞こえてくるのは華々しい活躍をしている合格者のものばかり。
まぁ暗い話より、明るい話のほうが聞いてて気分がいいですよね。
ネットで検索してみても、不合格者の話っていうのはなかなかお目にかかりません。
当時の司法試験制度
当時は、法曹界の若返りを図るため、初学者を優遇する制度がありました。この制度では、受験開始から3回まで下駄を履かせてくれ、合格しやすくなるようにしてくれました。
同じ頃、法科大学院の開設が決まり、一発勝負の司法試験(旧司法試験)を受けるか、法科大学院を出て法曹界に入るか、受験生の間で戦略に迷いが出ていました。
私は、不合格が続いていたものの、受験に必要な予備校の授業は受け終えていたため、法科大学院ではなく旧司法試験を選びました。
私のバックグラウンド
大学卒業後、金融関係の会社に新卒として就職しました。就職氷河期ではありましたが、仕事内容や給与面を含めて特に不満を感じることはありませんでした。
働き始めて1年くらい経った頃、ドラマ「HERO」の影響で大学時代に諦めた法曹界の仕事がにわかに魅力的に感じられるようになりました。今思えば若気の至りですが、ドラマに感化され、自分の名前で仕事がしたいという理由で会社を辞め、司法試験を受験することにしました。
結局、会社には1年半弱しか在籍していませんでした。
司法試験の合格率が低いこと、初学者と上級者が合格しやすく、中級者が合格しにくいことを聞いていたので、下駄を履かせてくれる3回の受験で合格できなければ諦めると決めました。
振り返ってみると、この撤退するタイミングを決めておいたことは、私の試験戦略において唯一のファインプレーだったと思います。
受験勉強時代
孤独な戦い
多くの受験生と同じく、私も予備校に通って試験勉強を始めました。
授業料は自分の貯金から捻出しました。昔から貯金癖があったのですが、自分のために思い切って投資するのは初めてでした。
初受験までは最短でも2年かかります。授業料で貯金がなくなってしまったので、生活費は塾講師のバイトで稼ぐことにしました。
昼は勉強、夜はバイトの毎日でした。ハードではありましたが、自分で選んだ道ですし、まだ若かったので何とかやれていました。
ただ不合格が続くと、少しずつ精神的にきつくなってきます。単なる被害妄想かもしれません。
受験仲間がいなかったこともあり、社会から孤立している感覚が日に日に強くなってきたんです。
「どうして会社をやめてまで受験しようとしたんだろう?」と自分の選択を後悔したり、バイトにのめり込むことで試験のことを忘れようとしたりと、後半はかなり逃げ腰な受験生になっていたと思います。
勉強だけでなく、生活もしていかなければいけないというのは、当時の私には抱えきれないほどの負担になっていました。親のすねをかじって勉強だけをすれば良い大学受験の浪人時代とは明らかに異なる点がありました。
かじれるすねがあるのであれば、しっかりかじって、合格してからお返しするほうが賢い戦略だと思います。
敗北宣言
結局、3回のチャンスを活かせず、期限が来てしまいました。
終盤には、どこかで「無理かも」と自分を信じることができずにいました。当時の択一試験を一度も合格できずに終戦です。支えてくれていた彼女に恩返しすることもできず、食事代もなかったので、持っていたバイクを売って、食費に充てたりもしました。
気持ちも折れてしまったので、諦めることにしました。最後には、見栄を張る気力すら残っていませんでした。
自分が壊れてしまうんじゃないかという危機感を感じながら、逃げるように司法試験の道から足を洗いました。
これからどうしようかという不安もありましたが、受験勉強から解放されたという気持ちが勝っていました。冗談抜きで、空の青さを見て、美しいと感じる余裕が生まれました。
就職(転職)活動
塾講師を続けるのか?
高校受験を控える子どもたちを受け持っていたバイト先で、私は全力で講師業をこなしました。もともと人前で話したり、子どもたちと接したりすることが好きだったので、当時の心の支えは塾講師のバイトだったかもしれません。
塾講師として食べていくことも考えましたが、中学受験の支援をすることがどうしても性に合いませんでした。能力の問題ではなく、小学生時代の貴重な時間を中学受験なんていう偏った競争に費やすようにさせることが、どうしてもできなかったんです。
自分が子を持つ親になって、少し考え方は変わってきましたが、それでも中学受験の準備に子どもたちを駆り立てるのは勇気がいることです。
就職先の条件
知り合いが誰もいないところでやり直したい。
就職活動をする上で、考えたのはこの一点だけでした。
大見得を切って会社をやめ、結局、司法試験に失敗しているので、古傷に触られないところで再起をかけたい。これだけを考えて、就職先を探しました。
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もちろん、自分が食べていけるだけの最低限の給料は必要です。それ以外は、没頭できる仕事、司法試験のことを忘れられる仕事を紹介してほしいとリクナビの担当者には依頼しました。
ベンチャー企業に就職
いくつか紹介していただいた中で目にとまったのが、医療業界のベンチャー企業でした。
創業3か月の会社でしたが、文系の私にとっては畑の違う理系の医療業界で、CRA(モニター)という仕事も初めて知りました。でも、やり直すにはこれ以上にない選択肢と感じ、社長の想いにも打たれて入社しました。
最初に勤めた大企業では、人生かけて仕事してる人なんて見たことがありませんでした。波風を立てず、淡々と仕事をこなし、時間になったら帰っていく、いい意味でも悪い意味でも平和な会社でした。
それに比べて、ベンチャー企業の創業者は背負っているものが違います。気迫、熱量、どれをとっても圧倒的でした。
社会における役割が異なるため、大企業のことを悪く言うつもりはありません。わからないことだらけでしたが、この社長にかけてみたいという直感に突き動かされて入社しました。
なにしろ、社員もまだ5人しかいないので、なんでもやります。仕事はもちろん、掃除やゴミ捨てなど何でもです。
とにかく夢中になって勉強し、働きました。
ベンチャーなんてつぶれて当たり前の世界で、今もその会社は成長を続けています。
ベンチャーの成功確率から考えても、その会社が潰れずに、その会社でキャリアを積み上げることができたのは本当にラッキーでした。
今でも感謝の気持ちしかありません。
結局、その就職から医療業界で働き続け、15年が経ちました。
一度レールからはずれた後、ある程度の稼ぎが得られるようになるには、こういった賭けが必要なのかもしれません。
日本はまだ新卒一括採用が幅を利かせています。
ジョブ型の採用が少ないため、ドロップアウトで失った「年次」を取り戻すには、これくらいしか方法がない気がします。
心境の変化
未練はないのか?
15年経ったいまでも、不合格の結果には満足していません。
ただ、「やらない後悔」はしなくてすんでいます。
挑戦しなかったことを悔やむ人生よりはとても前向きな人生を送っているとは思いますが、世の中で言われているほどわりきれているわけではありません。
15年経ったいまでも、不合格の結果には満足していません。
もちろん個人差はあると思いますが、これが私の正直な気持ちです。風のたよりで、同級生や知り合いが弁護士として活躍している話を聞くと心がざわつく感じはあります。
15年が経過した現在でも、不合格の結果にはまだ満足していません。ただ、「やらない後悔」を避けることはできています。
挑戦をしなかったことを後悔するよりも、とても前向きな人生を送っているとは思いますが、まわりから思われているほどには消化しきれているわけではありません。私は今でもそのような心境です。
リスクを取るに値するのか?
司法制度改革により、法曹界への門戸が大きく開かれたことから、弁護士の平均年収が下がってきていると言われています。
2020年の調査では、その中央値は650万円だそうです。年収だけを見れば、はっきり言っておいしい資格ではなくなってきています。少なくとも、今の自分の年収からすると「ハイリスク・ローリターン」な印象です。
しかしながら、この650万円という数字もあくまでも中央値であり、稼ぐ人はとんでもなく稼ぐ一方で、逆もまた真です。
もし、私が当時の試験制度の恩恵を受けて下駄を履かせてもらって、爪の先でギリギリひっかかって合格したとしても、スイスイと合格した人たちと勝負して仕事で勝てたかどうかは疑問です。
年収650万円以下のグループに入ってしまったのではないかと思います。
司法試験の勉強をしている人なら、周りにとんでもなくできる人がいることを理解しているでしょう。モノが違う、世界が違うという人です。こうした人たちと現場でやりあっていかなければなりません。
一緒に仕事をしていた塾講師の中には、20年目にしてやっと合格した人もいました。年齢や前述の競争のことを考えると、余計なお世話かもしれませんが、心配になったりもしました。
司法試験に合格できなかった場合、それ以外のことを否定されているわけではありませんが、受験をあきらめたときは、人として無能の烙印を押され、全人格を否定されたような精神状態になりました。
こうして落ち着いて振り返るようになるまで、打ち込める仕事を見つけ、10年以上の月日を必要としました。
人生100年時代と言われるようになりました。司法試験に合格しても失敗しても、人生はまだまだ続きます。こうしてなんとか暮らせているのは、とても幸運なことです。
受験時代の自分へのメッセージ
退路を断つことの功罪
尊敬している起業家の方が、ご自身の学生時代の話をされていた時に、在学中に司法試験に落ちたので仕方なく就職したというお話をされていました。
あの人でも合格できないんだという驚きと、そこからキャリアを形成しても十分に人生を謳歌できるんだと、とても救われた気持ちになりました。
24歳の夏、退路を断って受験生活に入りました。人からすれば無謀な挑戦に見えたことでしょう。その決断に自分が酔っていた面も否定できません。
今思えば、0か100かといった判断ではなく、もう少しグラデーションをつけて判断をすればよかったのではないでしょうか。社会で仕事をしてきたがゆえに、年をとってからそう思うのかもしれません。
退路を断ったことで、勉強に集中できた時期もありましたが、風向きが悪くなってきてからは相当精神的に追い込まれてしまいました。精神的にタフでないと、退路を断つことは諸刃の剣ですね。
同じような賭けに出ようか迷っている人は、悪いことは言いません。少し参考書を閉じて、この本を読んでみてください。
派手な成功をおさめている人のリスクのとり方を知ることができます。
また、HEROを見て勝手に妄想をふくらませ、若気の至りでとんでもない冒険に出てしまった人は、この2冊を読んで頭を冷やしてください。
若気の至りと無縁な人は、試験勉強の休憩に読んでみてください。法曹界の生々しい姿がこれでもかと描かれています。やる気に火がつくか、幻滅してしまうか、みなさんはどちらでしょうか。
司法試験の勉強で出てくるマクリーン事件などの有名な判決の舞台裏ものぞけます。
緊急避難場所を確保
心が折れそうになったとき、司法試験をあきらめて別の道を探すときに冷静になろう。緊急避難できる場所を確保しておこう。
すでに投入してしまった資源にこだわることの愚かさを教えてくれます。私たちが大事にすべきなのは過去ではなく未来です。
心にゆとりがあると、冷静な判断ができるようになります。そのような状態で、ワーストケースを想定し、緊急避難できる場所を用意しましょう。
これは、退路を断つことと両立する必要があると思います。それをしないと、無計画と言われても仕方ありません。
受験仲間がいなかった私は、応援してくれた人がいたおかげで何とか壊れずに済みました。
就職活動については、えらそうに言ってしまいますが、冷静にチャンスをつかみとったのではなく、力のあるベンチャーに拾ってもらえた幸運によって何とか立ち直ることができました。
司法試験に落ちた後は、精神的にかなり弱っているため、カモにされやすいということに注意しながら、心にゆとりがあるときに次の一手について考えておくことが重要です。
迷ったときは、この本が支えになるはずです。自分がすでに投入してしまった資源にこだわることの愚かさを教えてくれます。私たちが大切にするべきなのは過去ではなく未来です。
試験勉強で得た法律の知識で就職するか?
もし司法試験に失敗した場合、少しでも法律の知識があるというだけで仕事を選ぶのはやめましょう。
一般人より詳しいかもしれませんが、資格がないことに変わりはありません。有資格者に劣等感を抱き続けることになり、仕事の選択肢も極端に狭まってしまいます。
また、法律関連の仕事に限らず、机上で覚えたことは実際の仕事に必要なことのほんの一部に過ぎません。試験に合格しなかった自分の法律知識は、変なプライドを生み出すだけで役に立ちません。
むしろ、不合格になったことを機に、自分の人生をゼロから考え直す良い機会だと捉えましょう。広く情報を集め、エージェントから様々な話を聞きましょう。
\TRY NOW/
法律とは関係ない仕事でも、とりあえず話だけでも聞いてみましょう。もう勢いだけで何かを始める年齢ではありません。
ただ、社会の仕組みを知らないあなたに忠告します。
エージェントは、求職者を就職させることで報酬を得ています。求職者が満足していようがしていまいが、人を会社に送り込めば報酬が入ってくる仕組みです。
ですから、就職活動の主導権はあくまでも自分にあることを覚えておくべきです。どの会社に就職しようとも、エージェントには関係がないことを心に留めておきましょう。
また、あなたはすでに精神的に弱っている状態です。さらに、エージェントはその道のプロで、あなたとは情報量がケタ違いです。情報の非対称性ってやつですね。カモにされる典型的な例です。社会経験が少ないあなたは、注意しすぎることはありません。
暗黒の受験生活で得たもの
くり返しますが、法律の知識なんてほとんど仕事では役に立っていません。すぐに忘れてしまいますし、ネットで調べればたいていのことはわかる時代になってしまいましたので。
それでも、自分なりに地獄を見た経験は自分のキャパシティを広げてくれました。
また、なんだかんだでよほどのことがあっても死んだりはしないんだという変な自信はつきました。失敗してもやり直せばいいという肩の力が抜けたマインドセットになったと言ったらいいでしょうか。
それと、いわゆるレールからはずれてしまったのでもはや新卒の頃に必死でしがみついていたレールがなくなったので気持ちが楽になりました。受験生の端くれとして論文を書いていたので、仕事で文章を書くことがあってもアレルギー反応を起こすことはありません。
また、塾講師のバイトをしていたので、人前で話すプレゼンにもそんなにこまることはありません。
思っても見ないところで過去の経験が身を助けてくれていることに運命の皮肉を感じています。
それ以外のことは、司法試験をあきらめてから身につけたものばかりです。
それでも仕事で求められる勉強の量なんて言うのは、司法試験の勉強にくらべればどれも大したことはないです。そのあたりの耐性がついているというのは意外と武器になっているのかもしれませんね。
幸運にも(?)司法試験に落ちて、自分の別の可能性をためせる状態になったなら、エージェントの担当者を軸にいろいろな角度から情報を収集し、自分が再び輝ける場所を探してください。
明けない夜はないんです。親しくしていた先輩からいわれて勇気をもらった言葉です。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。CAMPION(Follow @beautifulrice1)でした。