「全身全霊ではなく“半身”で働くススメ」(三宅香帆)を見て考えたこと

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3つのポイント

社会人の読書離れの現状と背景

  • 調査によると、社会人の読書離れが深刻化しており、本を読まない人が6割を超える。
  • 背景には、仕事の忙しさや、動画やSNSといった短時間で楽しめるメディアの普及がある。
  • 読書は「無駄」と見なされがちだが、知識や広い視野を育てる重要な手段である。

ノイズ除去型社会が読書に与える影響

  • 現代社会では、音楽や漫画なども自分の好きなものだけ選ぶ「ノイズ除去」の傾向が強まっている。
  • これにより、社会人は未知の世界や他者を理解する力を失いつつあり、社会の分断が進むリスクが高まっている。

働き方改革による読書の余裕の確保

  • 全力で働くことをやめ、「半身で働く」ことで余暇にノイズを取り入れる余裕を生むことができる。
  • 読書を通じて得られる知識や視野の広がりが、個人と社会の成長を促進する。
  • 短期的な効率だけでなく、長期的な成長を見据えた働き方が求められる。

三宅氏の主張

1. 社会人の読書離れの現状と背景

近年、社会人の間で読書離れが進んでいます。その背景には、仕事の忙しさだけでなく、動画配信サービスやSNSといった短時間で楽しめるメディアの台頭があります。たとえ時間があっても、本を読む気になれない人が増えているのが現状です。

文化庁の調査では、本を読まないと答えた人の割合が6割を超え、5年前と比べて15ポイント以上増加しました。一方で、小中学生の読書量は増加傾向にあります。これらの結果から、現在の読書離れは主に社会人の問題であることが分かります。

現代社会では、短い動画や簡潔な情報が主流となり、長い文章を読む時間が「無駄」と見なされる風潮があります。このような「ノイズ除去型」の情報取得が主流になる中で、読書は「ノイズ」として切り捨てられやすいのです。しかし、読書は単なる娯楽ではなく、深い知識や広い視野を育てるために重要な手段です。長い文章を読むことで、情報を批判的に捉え、複雑な社会問題を理解する力が培われます。

2. 読書を取り巻く現代のノイズ除去の傾向

また、この「ノイズ除去」の傾向は、他の分野にも影響しています。音楽では好きな曲だけを聴き、漫画もアプリで特定の作品だけを読む人が増えています。この結果、社会人は自分に直接関係のない情報や未知の世界を遠ざけ、想像力や他者理解の力を失いつつあります。社会の分断が進む今、他者や未知の世界を理解する力はますます重要です。

3. 半身で働くことで生まれる読書の余裕

では、社会人が再び読書を生活に取り入れるにはどうすればよいのでしょうか。その鍵は「働き方」にあります。全力で働くことが美徳とされる現代社会では、仕事以外の時間も効率的に使おうとする意識が強まり、余暇ですら「有意義」に過ごさなければならないと感じる人が増えています。このような働き方では、視野が狭まり、読書のようなノイズを取り入れる余裕がなくなります。

そこで提案するのが「半身で働く」という考え方です。全力で仕事に向かうのではなく、適度に力を抜き、仕事以外の時間で趣味やコミュニティ活動に参加することで、ノイズを取り入れる余裕を作るのです。この余裕が、読書への意欲を高めるきっかけになります。

読書を通じて得られる知識や視野の広がりは、個人にとっても社会にとっても重要です。短期的な効率だけでなく、長期的な成長や社会的なつながりを見据えた働き方が求められる時代です。「半身で働く」ことで余裕を持ち、読書を日常に取り入れること。それが、個人と社会の成長に繋がる第一歩となるのではないでしょうか。

自分で考えたこと

「仕事が人生の全て」という人がいても良いと思います。しかし、そうではない人もいるでしょう。環境や性格によって、そのような働き方が難しい人もいるはずです。そのような人が「仕事が全て」の生き方をしようとするのは、苦痛でしかありません。だからこそ、「半身で働く」という考え方を知るだけで、心にゆとりを持って生きられるのです。

本書は、読書を持ち上げすぎている印象があります。私も読書が好きだからこそ、読書をことさらに崇め奉るような発言には慎重であるべきだと思います。読書をするもしないも個人の自由です。ノイズを取り込む方法としては、テレビ、ポッドキャスト、YouTubeでも良いはずです。それを理解した上でなお、読書に挑戦したことがない人には、ぜひ挑戦してほしいと思います。

挑戦しない理由が働き方にあるのなら、本書の提案するように半身で働き、挑戦してみてほしいのです。テクノロジーの進化で得た時間をさらなる効率化に費やすことも一つの選択ですが、すぐに役立つかどうか分からない読書に使ってもらえたら、本好きとしてこれほど嬉しいことはありません。それでも本が合わなければ、そこでやめても遅くはないはずです。

本を読まない理由は人それぞれです。働き方が原因だと決めつけることには反対ですが、全身全霊で仕事に打ち込んでいることが原因で本を読めない人もいるでしょう。そうした人には、三宅氏が提案している対処法をお勧めします。

具体的な対処法については、「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」で詳しく書かれています。

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