この記事には広告をふくむ場合があります。
記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売上の一部が還元されることがあります。
こんにちは。日本オートキャンプ協会でキャンプのインストラクターをしているキャンプ大好きCAMPION(Follow @beautifulrice1)です。
歳をとるとあたらしいことに臆病になる。山でテント泊をするのも私にとってそのあたらしいことのひとつ。そのくせ憧れだけは強かったりもする。そんな憧れが思いがけず実現してしまう。
2022年8月お盆に立山室堂へ旅行の計画をしていた。いつもなら斑尾高原キャンピングパークに行くが、今年は予約をしそびれてしまった。滞在期間はおよそ1週間。前半は山小屋のみくりが池温泉、後半はホテル立山に宿をとった。ところがである。出発3日前、ホテル立山がコロナで臨時休業するとの連絡が。
コロナにかからないように細心の注意を払ってきたが、ホテルのコロナはどうすることもできない。ホテルだけならまだしも、周辺のお店も閉まっているところが多いらしい。
さて、こまった。
テントで泊まるか!
それいいね!!
思いつきで発した一言から事態は急展開。数分後には、妻が山道具のレンタル屋さんやまどうぐレンタル屋 を見つけ出し、いくつか道具を予約。冗談のつもりで口にしたことがどんどんかたちになっていく。動き始めたら止まらない妻。社会人になる前にブレーキはなくしたっきり。バタバタと準備をして、8/18から1泊2日で雷鳥沢キャンプ場のお世話になった。
視界不良のキャンプ場
お盆期間中は雨続き。風も強く、ほとんどまわりが見えない。ガスっていることも多く、写真で見た立山室堂の景色を見れたのは最終日の帰り際だけ。というわけで、いきなり大雨の中での設営を経験。
深い霧の中から突如現れたテント場。受付をする前にテントを立てるというルールも初耳。土砂降りなのでなりふり構わずテントを準備。オートキャンプなら来る前に荷物を置いておけるが、山にはそんな気の利いたスペースはない。とにかく必死でテントを立てる。かかった時間も覚えてない。
まわりの先輩たちのテントを見ながらテントを固定。ペグを打てない不安をありったけの石でふたをした感じ。びしょ濡れになりながらなんとか設営完了。せまいテントに家族4人で入って健闘を讃えあう。幸い、子供たちは元気いっぱい。雨に濡れて風邪をひく気配はまったくない。妻も雨男を見ながらケラケラ笑ってる。
午後から雨が止むという予報を頼りに待ち続けて結局びしょ濡れになったが、山に来てるのにそんなに晴れを期待しちゃあいかんよなとささやく自分もいた。そういえばオートキャンプのデビュー戦も雨だった。
テントに入ったらまず着替え。それが終わったらおやつ。ほっとしたところで困ったのが荷物をどこに置くかということ。このテントにはおまけ程度の前室しかない。家族の靴を置いたらほとんど空きがない。先輩たちの様子を見ようにもテントの中はのぞけない。仕方がないので前室には靴以外に濡れてしまった荷物を積み上げる。テント内は子供の足元のところに荷物を積み上げる。姿勢を工夫すればなんとか寝れそうなスペースを作ることはできた。けど、まったくそれが正解のように思えない。こんなスペースで生活できる山の民はよっぽど我慢強いか、やせているかのどちらかだ。
姿をあらわしたキャンプ場
夜の8時。そろそろ寝ようかという頃になってようやく雨が止んだ。時折思い出したようにポツポツと降ることはあったけど、これまで降り続いていた雨とはちがう。雨やみ間近の雨だ。外に出て、山小屋で買ったパン弁当の残りとあったかいスープを少しだけ飲んだ。スープはトランギアのアルコールバーナーを使ってあたためた。ソロキャンプに憧れて持っていた装備が役に立った。外気温は10℃くらいだったと思う。寒かった。ぬくもりのあるスープだった。
山の朝は早い。そう聞いていた。
滞在中、最初で最後の晴れなので、翌朝は日の出を見ることにした。シュラフにくるまって過ごす夜は寒かった。気温は5℃くらいまで下がったと思う。レンタルしていたのはモンベルのシュラフダウンハガー650 #3。極度の寒がりのわたし、テントの幕にシュラフの足元が触れてしまい、対処法がわからぬまま寒い夜を過ごした。寒さが気になりだすと途端に眠れなくなる。3時ごろ、あきらめてテントを飛び出し星空を眺めることにする。
雨の代わりに降ってきそうな星たち。山の上にいるからか、心なしが星との距離も近い気がする。いくつかiPhone 12 miniで写真を撮ったが、星空の魅力の3%くらいしか表現できない。雑誌で見かける星空でも素敵だと思うことは多いが、実物は別格。雨上がりでほこりやチリがなく星を見るには絶好の条件がそろっていた。
そのまま朝になるまでテントの中でゴロゴロ。星空好きの妻は、3時ごろから朝までずっと星空を眺めていた。日の出間近のテント場は、すでに登山者の活動スタートのピークを過ぎていた。ほとんどの人たちが支度を終えて出発してしまった。星空監視員の妻によると、みんな暗い中で準備をし、暗い中で出発していったとのこと。山をみると、ヘッドライトの列がすこしずつ上の方に移動していく様子が確認できたんだとか。
7時過ぎ、ようやく日の出。周囲の山から顔を出すのに時間がかかるため、平地の日の出よりも1時間ちょっと遅い。寒さでからだがガチガチになっていたので、太陽のあたたかさが身に染みた。人生で一番あったかかったかもしれない。
パン弁当の残り物とスープで朝ごはん。アルコールストーブの燃料が途中で切れてしまったので、スープはぬるめ。荷物を減らそうと燃料をケチったのがいけない。ごめん、子供たち。室堂の売店で買っておいたビールで乾杯。オートキャンプと違って車の運転をしなくていいので、お酒を飲んでも大丈夫。寝不足、太陽熱、アルコールでからだがよくわからない状態。
待ちに待った散策
ものさえ乾けば撤収はあっという間。オートキャンプとは比較にならない。なんとなくテント跡地を写真におさめてみる。遺跡でも見つかったかのような構え。
せっかく晴れたのですぐに帰るなんて無粋なことはできない。荷物を置いて散策に出かけることに。荷物が盗まれるんじゃないかと心配したが、昨日までの雨続きで人は少ないし、雨の中をわざわざ悪さをしに来る酔狂もいまいと出かけた。盗難の心配をしないといけないアウトドアなんて悲しいかぎり。
高山植物の類はまったくわからないけれど、歩くたびに景色が変わる感覚ははじめて。前々日に雷鳥を見たので、あわよくばオコジョにあえないかと期待したり。環境が厳しいからか、どの植物も華奢なたたずまいをしていたのが印象的だった。
長女は8歳、次女は5歳とまだ小さいので山を登るところのむずかしいだろう。これまで日帰りの登山すらしたことがないのでぶっつけ本番にしては相手が手強すぎる。高尾山あたりで練習を積んでもうすこし上まで登るか、登るのはお姉ちゃんだけといった感じで部隊を分ける必要がある。
大きな石、小さな石、ゴツゴツした石、丸い石、歩きながら石を観察するだけでも子どもたちは楽しんでいる様子。まわりを見ればたくさんの山に囲まれていることに気づく。これまで雨続きでまったくまわりの様子がわからなかったのである。
散策を満喫。それほど歩いたわけではないが、慣れない道を歩いたので心地よい疲労感。この時点で帰りの移動時間は眠りこけてしまう予感しかない。
荷物を背負い、雷鳥沢キャンプ場を後にする。まずは、立山室堂ターミナル方面へと進んでいく。来る時には雨で気づかなかったけどこれがなかなかの上り。息を切らしながら一歩ずつ前に進んでいくけれど、時折休憩がないと体がもたない。
ザックに入り切らなかった荷物を手に持っていることもあり、どんどん体力を削られていく。そもそもザックのサイズをまちがえているわけで。山小屋泊を前提にザックを準備したので当然なわけで。ここは大きな反省点である。ちなみに背負っていたのはわたしが35L、妻が40L。こどもたちはおまけ程度。これでは山の先輩たちに激怒されるレベルだ。ごめんなさい。
雷鳥沢キャンプ場の余韻
坂を登り、テント場を振り返った時にとったのがこの写真。距離感が伝わるだろうか。
「よく登ったなぁ」と家族の健闘を讃えあい、疲れを取るためにみくりが池温泉で汗を流すことに決めた。お腹が空いていたので、各々食べたいものを腹一杯食べることにした。開放感に包まれていたのとパン弁当のパンが冷たかった反動で、ビール、ピザ、あんバタートーストを貪るように食べてしまった。パンの温度って大切。
山とビール、山と温泉、この組み合わせは最強。こういうのをシナジー効果というんだろう。わが家はテントに泊まっただけだが、山に登った人にとってはさらに強力なシナジー効果をもたらしているはずだ。
ザックひとつで外に出かけ、家族みんなで寝泊まりする。こんなことができるなんで思いもしなかった。なんだかとても自由になれた気がする。どこにでも行けるような気すらしてしまう。自分で勝手に作っていた檻をぶっ壊した感覚がある。大げさに聞こえるかもしれないが、それくらい大きな衝撃を受けた。
コロナで窮屈な生活を強いられているが、皮肉にもコロナに背中を押される形で新しい扉が開けた。
あまりにうれしくなって帰りに「無人地帯の遊び方」を買い、貪るように読んでしまった。少年の心が戻ってきたようだった。
天気と装備
きっと雷鳥沢キャンプ場へはもう一度行くことになる。自分たちに余裕がなさすぎて、遊び尽くした実感がない。不完全燃焼だ。次のために当日の気象条件、装備、環境などについて記録を残しておく。
気温は5℃から18℃くらい。氷点下になることはなかったし、20℃を超えることもなかった。どちらかといえば、雨の影響で寒いと感じることが多かった。特に夜。寒がりなわたしは、モンベルのシュラフ(ダウンハガー650 #3)では物足りなかった。テントの幕との距離の取り方が悪かったかもしれない。
日中は、長ズボンに半袖シャツ2枚。長ズボンはユニクロのウルトラストレッチアクティブジョガーパンツ、シャツはマラソン大会の参加賞でもらったTシャツ。すこし肌寒かったので2枚重ねに。雨でレインウェア(レインダンサージャケット)上下を着ているのでほとんど寒さは感じない。けれど、モンベルのレインウェアがなかったらかなり追い込まれていたはず。
テント泊のために借りたのは、ダンロップVS40という4人用のテント、4人分のシュラフ、エアマット。4人用のテントはかなり窮屈。子どもが小さいとはいえ、オートキャンプで使っているツールームテントに慣れているので、その差は歴然。雨でシュラフをひとつ濡らしてしまったので、お互いの体温を分け合って生き延びた感じ。次はなんとしても濡れない工夫をするつもり。
靴は山歩き用に4人分モンベルで購入。旅行前に近所の公園で試し履きもして準備はバッチリ。滞在中も靴のトラブルは一切なし。むしろ、山靴の防水性能に感心しっぱなし。テント泊だけでなく山登りでも積極的に使っていきたい。下山後、足の裏がクタクタだったので、厚手の靴下を用意してみるのがいいかも。たしかに、お店ではなんどもすすめられた。
帰宅後、山あそびの動画をみると、テント場とそれ以外で大きく服装を変えるのが一般的らしい。わが家は本格的に山登りをするわけではないので、そこまで気にすることもないとは思うが、動いている時・休んでいる時のメリハリをつけられるように使い分けを考えておく必要はあるだろう。
トイレは改装中。仮設トイレがずらっと並んでいた。工事期間を確認していないが、しばらく続くだろう。数が多いので不便を感じることはなかった。天気がよく、人手が回復したら不便を感じることもあるかもしれない。
予想外の展開で山でテント泊することになったが、こんなにおもしろいものだとは思いもしなかった。からだひとつで持ち運ぶにはそれなりの量の荷物が必要になるが、オートキャンプとは比較にならないほどコンパクトなのもいい。つねづね荷物の積み込みに疑問を感じており、大いなる可能性を感じた。また、車を運転する必要がないのもうれしい。疲れていても乗り物に乗っていればいいというのはとてつもなく快適。近々、再訪する予定。そんな決意表明をして終わりたい。
雷鳥沢キャンプ場でみつけたそれぞれの定番 9月の雷鳥沢キャンプ場で着たもの