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3つのポイント
アサド政権崩壊後のシリア内情と課題
- アサド政権の突然の崩壊後、シリアではイスラム武装組織の主導で暫定政権が発足。
- ジャウラニ氏が新政府の中心となり、少数民族や女性の権利を尊重する姿勢を示しているが、シリア解放機構は依然として国際的にテロ組織に指定されている。
国際社会の対応と分断
- 国連特使がシリアの深刻な貧困状況や武装勢力間の戦闘継続を報告。
- 欧米諸国は経済制裁やテロ指定解除に慎重。一方、ロシアや中国は制裁解除を訴えつつ、崩壊への評価を避けている。
地域情勢への波及とリスク
- イスラエルは空爆を強化し、ゴラン高原の軍事支配を拡大。
- イランはシリア経由の武器輸送ルートを失い、核開発加速の懸念が高まる。
- 新たな内戦や過激派の台頭の可能性があり、中東全体の安定に影響を与える。
番組の概要
1. アサド政権崩壊後の混乱と再建への動き
シリアで半世紀にわたり続いたアサド政権が崩壊してから半月が経過しました。この突然の政権崩壊は国内外に大きな波紋を広げています。現在、イスラム武装組織シリア解放機構の主導で暫定政権が発足しつつあり、国の再建が模索されています。その中心人物であるジャウラニ氏は、暫定政権の首相、外相、国防相を任命し、新しい国づくりに積極的に関与しています。
ジャウラニ氏はイギリスBBCのインタビューで、「タリバンのような厳格なイスラム統治は行わない」と明言し、イスラム法の厳格な解釈を否定しました。また、少数民族や宗教、宗派が異なる人々との融和を図り、女性の教育を受ける権利を尊重する方針を示しています。しかし、シリア解放機構は国際的にテロ組織に指定されており、これが国際社会との関係改善における大きな障害となっています。特に、アメリカやEUなどがテロ指定解除や経済制裁の緩和を慎重に検討しているため、シリアの未来には不透明感が漂っています。
2. 国際社会の対応と再建の課題
アサド政権崩壊後、国連安全保障理事会では今月初めて公開会合が開かれました。シリアからオンラインで参加した国連特使ペデルセン氏は、長引く内戦の影響が国民に深刻な苦難をもたらしていると報告しました。国内では90%以上の国民が貧困状態にあり、一部地域では武装勢力間の戦闘が依然として続いています。また、前政権による残虐行為の実態が次々と明らかになる中、公正な処罰が行われなければ国民の融和が難しいとの指摘もありました。
欧米諸国や日本は、アサド政権の崩壊を歓迎し、国の再建に一定の期待を寄せていますが、暫定政権に対する慎重な姿勢を崩していません。具体的には、経済制裁の解除やテロ組織指定解除には踏み込まず、女性の権利保障や化学兵器の廃棄などの実績を求めています。一方、ロシアや中国、イランは制裁解除を訴えるものの、アサド政権の崩壊については評価を控えています。ロシアは地中海沿岸に設置した軍事基地の権益維持に注力しており、中国もシリア情勢を通じて自国の外交的影響力を強化することを狙っています。
3. 地域への波及効果と新たな緊張
シリア情勢は周辺地域にも大きな影響を与えています。隣国イスラエルは、アサド政権崩壊直後からシリア領内の軍事施設を空爆し、安全保障上の脅威に対抗しています。また、シリアとの国境に位置するゴラン高原の軍事支配を一層強化しました。一方、イランにとっては事態がさらに複雑です。イランは、イスラエルに対抗するために支援してきたシリア経由の武器輸送ルートを失い、抑止力が大幅に低下しました。この結果、イランが核開発を加速させる可能性が国際社会で懸念されています。
さらに、アサド政権の崩壊の背景には、北のウクライナ戦争や南のガザ地区での紛争が影響しています。ロシアがウクライナに集中し、イランとレバノンのヒズボラがガザ紛争に巻き込まれる中、反政府勢力が一気にシリアで優勢となりました。しかし、不安定なシリア情勢に多国が干渉すれば、新たな内戦が勃発する可能性が高まります。中東では、かつてイラクやリビアで独裁政権が崩壊した後、解放感が短命に終わり、内戦や過激派の台頭が続いた歴史があります。今回のシリアでも同様のリスクが懸念されています。
シリアの新しい国づくりが成功するかどうかは、中東全体の安定に直結します。引き続き国際社会が慎重に状況を見極め、支援を調整していくことが求められます。
自分で考えたこと
シリア国民のことを真剣に考えている人は果たしているのだろうか。
最初に感じた疑問である。アメリカ、ヨーロッパ、ロシア、中東といったさまざまな国の見解や関与が紹介されていたが、どの国もシリア国民のことを真に考えているようには思えなかった。
各国はシリアを利用して何とか自国の利益を高めようとしている。そのためにもっともらしい理由を並べているが、どれも納得できるものではなかった。
特に気がかりなのは、イスラエルの動きである。ここぞとばかりにシリア周辺に介入し、イランの勢力を排除しようと懸命になっている。これまでも情勢が混乱させられてきたが、今回も混乱に乗じて思うままに行動している印象を受ける。
このような状況で、シリアの政情が安定するとは考えにくい。過去の過ちが繰り返されるような気がしてならない。周辺国との経済的・民主的な格差が拡大した現代において、後発の国が自立することは難しいのではないだろうか。