【感想】「すいません、ほぼ日の経営」(川島蓉子、糸井重里:日経BP社)

すいません、ほぼ日の経営 アイキャッチ

この記事には広告をふくむ場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売上の一部が還元されることがあります。

本書を読んだきっかけは、ちきりんさんによるご紹介でした。

一言でいうと

やわらかい色の資本主義を見ることができる一冊。

本書を読んで3つのことを考えました。

1. 腹落ちするたとえ話

本書だけではなくほぼ日のコラムなど、糸井さんが表現物で使われる言葉はすぅーっと体に染み込んできます。

文章に使われているひらがなの効果もあるでしょう。

しかし、体に染み渡る理由は決してそれだけではありません。

そこに表現されていることそのものにも納得感があります。

よく見ると納得感が得られるほとんどのケースで腹落ちするたとえ話が組み込まれています。

そのたとえ話の秀逸さといったらありません。

自らの経験や何かに対する考えなど、その中身についてあと少しで言語化できそうな段階、喉まで出かかっている段階と自分の言葉で表現できた段階との間には大きな壁があります。

自分が腹落ちする表現にたどり着くまでにはしつこく考える必要があります。

糸井さんの言葉はその壁を越えた後に出てくる言葉ばかりのような気がします。

本書でも、社員全体の自律的な活動を筋トレに例えたり、ほぼ日がやってきたことを田んぼを耕すと例えたり、チームメンバー同士での役割分担を内臓に例えたり、上場をジムに例えたりと、抽象的な話になりそうなテーマもこのたとえ話のおかげで随分と理解が進みました。

糸井さんの言葉には、何かを分かった気にさせる不思議な魅力にあふれています。

2. 徹底されるきほん

本書全体を通じて、今の資本主義的な発想、働き方改革へのアンチテーゼがありました。

徹底抗戦というよりは、なんかしっくりこないからちょっとちがうんじゃない!?というニュアンスです。

右肩上がりに規模を追求したり、額に青筋を立てて息を止めて集中するような働き方改革は長続きしないんではないかといった肩の力が抜けたアプローチです。

柳澤大輔さんが書かれた「鎌倉資本主義」にも、似た問題意識が書かれていました。

鎌倉資本主義 【感想】「鎌倉資本主義」(柳澤大輔:プレジデント社)

すべての会社員が必要以上にスピードにこだわる必要はない。

「どうして?」、「どこが?」といったかたちで、身近なことについて自分や仲間に問い続けていくことの重要性を繰り返し説明されていたのが印象的でした。

https://campion110.net/wp-content/uploads/2019/07/IMG_2666-e1564406598919.pngCAMPION

やることが多いと、このしつこさを維持するのは難しいよね

1人の社員としては、とにかく問いを持ち続けること、経営者としてはとにかく社員による自律的な問いを待ち続けることしかきほんを徹底させることはできません。

私は経営をしたことがない1人の社員として生きている期間が長いのですが、自分の職場でこの問い続けることができるイメージがわきません。

自分の職場で考えた場合、上に立つ人が「待つ」ことに対する免疫がないこと、下の人が根気よく基本を実行するマインドがないので、自分の会社できほんの徹底を目標として設定する場合には抵抗勢力との争いによって、かなり体力を消耗するはずです。

3. 心のあり方・組織のあり方

もし私がほぼ日で働いていたら、きっと糸井さんには多くのことで指導を受けたことでしょう。

はやりの「多様性」についてしっかりと考えた上で、現場で具体化されているケースを紹介されていました。

きちんとしていることだけが至上の価値ではない、同じものを見たときにおもしろいと肯定できる肯定感、陰口が相手にされない環境作り、聞いてくれない人がいても小利口にならずに継続的に話す機会をもつことなど、ちょっとした心のあり方が積もり積もって組織のあり方をも変えてしまう可能性があるんだということを知りました。

徹底されるきほんとは違って、この中のことであれば1つや2つを仕事の現場に取り入れることができそうです。

少しでも実践できれば、だいぶ雰囲気が変わるような気がします。

私が読んだ本

本書以外に私が読んだ本を一覧にしています。ぜひご覧ください。

▶︎ 私の血となり肉となった本たち

最後までお読みいただき、ありがとうございました。CAMPION()でした。