オプジーボに集まる過剰な期待と不安

問診票とカルテ

本庶佑さんがノーベル医学生理学賞を受賞されました。

同じ日本人というだけで急に民族意識が芽生えてしまうのですが、とてもうれしいニュースです。

 

本庶さんが発見したPD-1が生み出したがん治療薬「オプジーボ」には、このノーベル賞受賞も追い風になって大変な注目が集まっています。

しばらく前には、オプジーボの効果よりも価格によって注目されていた時期がありましたが、ずいぶんと状況が変わったものです。

 

オプジーボを開発した小野薬品の株価が高騰したのは想像できたとしても、病院に問い合わせが殺到しているという事態は想像できませんでした。

1日の問い合わせの8割がオプジーボに関することだという病院もあるというのでとても驚きます。

もし自分ががんを患っていて、なかなか治療の効果がないという状況だったとしたら同じように病院や担当の医師に相談を持ちかけているかもしれません。

やはりそのくらいこの一連のニュースはインパクトが大きいです。

 

しかし、こういう状況だからこそ正確な情報を把握しておく必要があります。

詐欺師にとってはよだれが出るような状況に思えてなりません。

 

テレビなどの電化製品でいう取扱説明書のように、オプジーボのような医薬品にも添付文書という説明書がついています。

患者として治療を受けるときに添付文書を見ながら説明を受けることはないのであまりその存在は知られていないかもしれません。

オプジーボの添付文書を見てみます。

オプジーボの添付文書(全文)

効能・効果の欄にはこのように書かれています。

悪性黒色腫

切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌

根治切除不能又は転移性の腎細胞癌

再発又は遠隔転移を有する頭頸部癌

がん化学療法後に増悪した治癒切除不能な進行・再発の胃癌

がん化学療法後に増悪した切除不能な進行・再発の悪性胸膜中皮腫

がんの部位だけでなく、進行の度合いやこれまでに受けた治療についてもかなり限定されています。

少なくとも保険診療の範囲内でと考えると全てのがんに対して治療効果がありますというような夢の新薬と考えることには慎重になる必要がありそうです。

今後、適応拡大をしてもう少し間口は広がっていく可能性も考えられますが、添付文書という切り口でオプジーボを見ると報道で誇張されているような内容を鵜呑みにするのは控えた方が良さそうです。

 

とはいえ、この治療法の可能性という点ではとても期待が持てます。

ただ、その可能性が花開くにはそれなりに時間がかかることでしょう。

過去にがん治療のために開発された外科手術、放射線治療、化学療法がある程度コントロールできるようになるには、数十年という時間の経過が必要でした。

その過程で患者さんだけでなく、キュリー夫人の例を挙げるまでもなく研究者自身も命を落とすこともありました。

 

自戒を込めて、ノーベル賞の熱狂を少し落ち着いて眺めてみました。

【感想】がん‐4000年の歴史 シッダールタ・ムカジー著(ハヤカワ文庫)